介護・福祉関係

高次脳機能障害の特徴と支援方法について

高次脳機能障害を患っている利用者の支援が難しい。

どういった関わり方をすれば良いのだろうか?

そんな方に向けて。

私は特養で介護士をしていますが、高次脳機能障害のある利用者の方の支援で苦慮する場面は多いです。

対応に苦慮する介護士の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、高次脳機能障害の特徴と支援方法について簡単にまとめました。

症状の特徴を理解し、日々の支援にいかしていきましょう。

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害は、脳血管障害(脳梗塞やくも膜下出血、脳出血など)や脳外傷、脳炎などで脳に損傷を受け、言語能力や記憶、思考能力、空間認知能力などの認知機能や精神機能の障害が現れた症状の総称です。

症状が多様で様々な症状の特徴から、外見からはわかりずらく、性格のせいにされることが多いです。

そのため、当事者は日常生活や対人関係がうまくいかず、ストレスを感じてしまいます。

そして、自信をなくし混乱や不安が助長することがあります。

支援者として、症状の特徴と当事者が抱えるストレスは計り知れないことを理解しましょう。

高次脳機能障害の症状は?

高次脳機能障害の症状は多様です。

どのような症状があるか紹介します。

①記憶障害

  • 以前のことを忘れる。
  • 新しいことが覚えられない。
  • 同じことを何度か聞く。

主にこのような症状が見受けられます。

②注意障害

  • ミスが多い。
  • 集中力が落ちた。
  • 2つのことが同時にできない。

主にこのような症状が見受けられます。

③遂行機能障害

  • 自分で計画を立てて実行できない。
  • 指示がないと動けない。

主にこのような症状が見受けられます。

④失語症

  • 話が理解しにくい。
  • 話す、読む、書くことが苦手で困難。

主にこのような症状が見受けられます。

⑤感情・欲求コントロールの低下

  • 怒りっぽくなった。
  • すぐイライラする。
  • 我慢ができない。

主にこのような症状が見受けられます。

支援者側がストレスを感じやすいのは、この症状の対応をしているときではないかと思います。

⑥半側空間無視

  • 片側がうまく認識できない。

このような症状が見受けられます。

⑦依存性・退行

  • 過度に他人に頼る。
  • 子供っぽくなった。

主にこのような症状が見受けられます。

この症状の対応も、支援者が感じるストレスは大きいかと思います。

⑧発動性・意欲の低下

  • 日中ぼーっとしている。
  • 自分から行動できない。

主にこのような症状が見受けられます。

では、これらの症状に対して、具体的にどのような支援をしていけば良いのでしょうか?

主な症状とその対応

以下から、各症状に対しての主な対応方法について紹介します。

①記憶障害

  • 以前のことを忘れる。
  • 新しいことが覚えられない。
  • 同じことを何度か聞く。

この症状に対しては視覚的に理解しやすい対応が望ましいです。

スケジュール帳やカレンダー、タイマーなどを用いて視覚から日時や予定を理解しやすくする。

大事なものや普段から使用するものの置き場を決め、名前のシールを貼ってわかりやすくするなどといった対応が挙げられます。

ポイント

視覚的に理解しやすい対応を検討しましょう。

②注意障害

  • ミスが多い。
  • 集中力が落ちた。
  • 2つのことを同時にできない。

この症状に対しては、環境を整えスモールステップで実行できる対応が望ましいです。

簡単な作業からはじめて、少しずつ集中できる時間や量を増やしていく。

作業や大事な話をするときは刺激の少ない環境を行なう。

集中できる範囲、時間内で作業を終え、休息を十分にとるなどといった対応が挙げられます。

ポイント

環境を整え、ストレスを最小にしていきましょう。

③遂行機能障害

  • 自分で計画を立てて実行できない。
  • 指示がないと動けない。

この症状に対しては、シンプルかつ明確な対応が望ましいです。

1日のスケジュールや生活環境はシンプルに整理する。

指示は明確かつ具体的に伝える。

予定の内容は事前によく説明する。

説明や指示内容をメモする。

事前に相談相手を決めておく。

作業は手順書を見ながら確認して行なう練習をするなどのような対応が挙げられます。

遂行機能障害は、混乱しやすくなるため、混乱にならないようにする配慮が必要です。

ポイント

シンプルでわかりやすく、本人の混乱を少なくする対応を検討しましょう。

④失語症

  • 話が理解しにくい。
  • 話す、読む、書くことが苦手で困難。

この症状に対しては、短い言葉で伝え相手を焦らせず、視覚的支援が望ましいです。

ゆっくりと短い言葉で話の内容を確認しながら話す。

文字や図、写真、ジェスチャーなどを使用してわかりやすくする(50音表は混乱しやすく苦手)。

大事な要件はメモを渡すなどといった対応が挙げられます。

ポイント

本人のペースにあわせ、理解しやすい対応を検討しましょう。

⑤感情・欲求コントロールの低下

  • 怒りっぽくなった。
  • すぐイライラする。
  • 我慢ができない。

この症状に対しては、適度な休息とイライラした際に物理的に距離をとる対応が望ましいです。

環境の変化やマイナス感情への対処が困難で、ストレスがたまりやすいことを理解すること。

混乱なく安心して過ごせる生活環境を整えること。

疲労に配慮し疲れる前に休息をとることを勧めること。

イライラしたら場を変えて相手との距離をとるなどといった対応が挙げられます。

支援者側も人間なので、本人から怒りをぶつけられたときにストレスを感じるのは当然です。

本人からの怒りが増し一方的になるようなら、一度を対応をストップし半ば強制的に場を離れましょう。

双方がストレスを最小にすることが望ましいです。

ポイント

本人と支援者、双方のストレスを最小にする対応や環境を整えていきましょう。

⑥半側空間無視

  • 片側がうまく認識できない。

この症状に対しては、空間無視側の環境を整えることが望ましいです。

空間無視側の文の始まりやテーブルなどの端に目印をつけて、注意を促したり声掛けをする。

普段から、空間無視側を意識する習慣をつけるトレーニングのサポートなどが挙げられます。

ポイント

空間無視側の環境を整えましょう。

⑦依存性・退行

  • 過度に他人に頼る。
  • 子供っぽくなった。

この症状に対しては、言われたとおりに対応しないことです。

本人から過度な要求が子供っぽい場面が見受けられた際、その言動や行動をそのまま受け入れてしまうことで、本人の症状をさらに進行させてしまうことが考えられます。

例えば、支援者に絶えず相手をしてもらいたがっている場合、5分待ってもらうことや、今やっている仕事が終わってからなど、我慢できそうな範囲で待ってもらう経験していただく。

状況的に対応が難しいときには、「今は対応できない」とはっきりと伝えたり、時間を限って話を聞くなどをして、依存的な行動を徐々に減らしていける対応が挙げられます。

ポイント

言われたとおりに対応せず、状況を伝えて対応を区切ったりして、依存性を減らしていく対応を検討しましょう。

⑧発動性・意欲の低下

  • 日中ぼーっとしている。
  • 自分から行動できない。

この症状に対しては、メリハリのある生活を過ごせるよう定期的に声掛けを行なっていくことが望ましいです。

例えば、施設入所する利用者の場合、食事や入浴以外の時間を居室のベッド上で過ごすという方も多いです。

施設内のレクリエーションや散歩にお誘いしたり、本人が趣味を楽しめる環境を整えていきましょう。

はじめは断り続け、なかなか参加にたどり着かないことが多いかと思いますが、絶えず声掛けを続けていくことが支援者には求められます。

意欲低下で常にベッド上で過ごすことで、認知症を誘発するおそれもあります。

メリハリのある生活を過ごせるよう、支援者側も環境を整えましょう。

ポイント

環境を整え、絶えず声掛けを続けていく。

まとめ

ここまで、高次脳機能障害の症状とその対応方法について、紹介しました。

高次脳機能障害は、脳の損傷部位や程度により、症状の程度や現れ方は人それぞれ異なります。

症状を複数合わせもつ場合も多いです。

支援者は、本人のできることとできないことの両方を評価し、発症前の生活や経験などを尊重した対応が望まれます。

本人が抱えるストレスを最小にし、症状に合わせた対応ができるようにしていきましょう。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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